トレッキング6日目②ABC - Himalaya
9時。
ABCを出る。とても満足。
先頭は陽気なフランス人、ダミアンとガレン。
ダミアンの背中から流れてくるBGMを聞きながら、筋肉痛のことを頭の隅に追いやり歩く。
やはり彼らの足取りはとてつもなく早い。
必死に歩く。
ふと、自分の後方左側、道ではなく岩場から気配がした。
振り返った瞬間、満面の笑みを浮かべたサイモンが空を飛んでいた。
比喩ではなくそのままの意味で。
ありえない勢いのまま着地し、こちらの道に戻ってきた。
だめ。笑いが止まらない。
どうかしている。ぶっ飛んでいる。
どうしてあの勢いで飛んできたんだろう。どうして着地できたんだろう。
彼は僕らとは別のtripをしているようだ。
少し心配だけど山のプロらしいし放っておこう。
なお、その後サイモンはどっかの景色が気に入ったのかしばらくフリーズしていた。
なおなお、ウルグアイカップルは彼らのペースを諦め、手を繋ぎ楽しそうにゆっくり歩いている。
10時。
MBCに到着。放りっぱなしになっていた荷物を片付ける。
「だめ。片付けられない。」
笑顔のサイモンがそう言い、ベッドに倒れ込む。
楽しそうなダメ男。
10時30分。
しびれを切らしたダミアンとガレンが、ぐだぐだしているサイモン、ウルグアイカップルを放置気味で出発。
僕とABCで一緒になったドイツ人も一緒に出発。
しかしものの20分で、ダミアンとガレンは点になる。
ドイツ人は遅い僕よりも遅いペースなので、先に行かせてもらう。
トレッキングではペースが合わない人同士で一緒に行くことはあまり幸せなことではないと思う。
天気は少しずつ悪くなる。
僕もかなり早いペースで歩いているつもりだが、もうダミアンとガレンは全く見えない。
Deuraliに着いた時もその姿は見えなかったので、筋肉痛はかなりきついが休まずそのまま行くことに。
少しずつ雨が降ってくるも、まあ大丈夫かとの思いと、雨具を出すのが面倒臭いとの思いからそのまま歩いていたら、気づいた時にはどうしようもないくらいの雨でビショビショになっている。
完璧な判断ミス。ぼーっとしすぎた。今更だが雨具を出す。
雨は止む気配がないため、進むしかない。
雨で地面が濡れているが、スニーカーのグリップ感は悪く無い。
滑ることは全くなく、むしろ感触がダイレクトに伝わるので一歩一歩にいつも以上に集中できる。
なんだか楽しくなりペースを上げてみる。
ビショビショの道だけど大丈夫。
しばらく急ぎめで歩いていると、岩陰で雨宿りしていたダミアンとガレンに出くわす。
結構長い間雨宿りしていたのだろう。全く濡れていない。
どれだけ楽しんでいても適切な判断が出来ている。さすが。
10分ほど休憩するも、雨は一向に弱まる気配はない。
Himalayaまでは10〜20分で着くはずと考え、出発することに。
彼らに先を歩いてもらう。
彼らの歩き方にいつも以上に注視する。
彼らの歩き方を真似る。
一人でペースを上げて歩いていた時にもなんとなく思っていたが、彼らの歩き方と僕の歩き方の違いが明確に分かった気がした。
12時半。
彼らに離されることなく15分、Himalayaに到着。